戦前まで、この本は当たり前に本屋に並び、当たり前に一般家庭の書棚に並んでいました。
しかし、この本は戦後すぐに、GHQによって “禁書指定” されてしまったのです。
流通を止められ、戦後の日本から葬り去られてしまいました。
いったいなぜGHQはこの本を禁書にし、日本人に見せないようにしたのでしょうか。
あの戦争で、日本は国力で12倍もの差がある米国に対し、約4年間の死闘を繰り広げました。
国を守るために一致団結、時には捨て身で体当たりする特攻兵を目の当たりにし、
米軍では、パニックで精神病を発症する兵士が増加。心底、恐怖を覚えたのです。
「もう二度と、強い日本は見たくない」
戦中から戦後にかけて、米国は日本の強さの秘訣を徹底して研究。
その一つに、日本独自の精神性が関わっていることを突き止めます。
そして、そのような精神性を育む教育を禁止。書籍の流通を一斉に止めたのです。
この『葉隠武士道』も、そのうちの1冊。この本には、建国当初からある“日本精神の原点”が、
一般大衆にも理解できるよう記されていたのです。
ちなみに、戦後も『葉隠』の関連書籍は複数出ていますが、
戦前〜戦中の激動期を生き抜いた著者が書いた “実践書” は多くありません。
あくまで戦後の感性で解釈されたもので、 “処世訓” としての側面が強調されています。
戦前に出版された『葉隠武士道』では、戦争という危機が眼前に迫るなか、国民の心を一つにまとめ上げるため、とくに日本古来の精神へと立ち返ることの重要性が説かれています。